母への手紙  あなたが旅立った朝に  11月12日


 長い戦いだったね お疲れさま 今は ただ ゆっくり おやすみなさい。
春に 病気が見つかって ずっと、戦って来たんだよね。 
つらい事も そりゃ いっぱい有ったよ。
痛いって 涙を見せた事だってあった。
でも、ずっと 一人で風呂入って みんなと一緒にご飯もりもり食べて 
さくらが遅いねって心配して 普通に生活しようとして来たよね。
酒が飲みたいって けんかした事も有ったけ。
 ありがとう 



私が 帰ったら みんな家族が大変だと病院から退院したくなかったんだよね。
本当は みんなの側にいたかったのに


俺は ずっと、親不孝して来たけど 最後の最後に 大きな奴をやっちまったね。
ごめんな。
きっと、驚いたよな。  それも、二度目の白血病だもんな 


俺が入院する朝 じゃぁ 行って来るよ。これが最後だったね。
さいごに もう一回 憎まれ口きいて けんかしたかったな。
なんだか,いっつもけんかしてたけど
それは 二人がにてるからかもしれないね。
どっちも 子供っぽいんだよな〜


あんたは 先生 それも 根っからの先生だったんだよ
ほんと かあさんは 慕われる先生だったよね。 
息子の俺は 絶対 先生を慕ったりしないタイプだか   
らさ なんなんだろうって いつも不思議だったんだ。
俺と同年代 いや もう少し上の団塊の世代の人たちが、
マサコ先生 マサコ先生って、訪ねて来たり 
なんか実った物を送って来てくれるのを見て
ちょっとは 羨ましかったんだ。


この頃 わかった様な気がするのは かあさんは めずらしい子供の気持ちのままの先生だったんだよ。
だから、子供達に慕われてたんだね。
子供と 遊ぶのが得意な先生か おれもそうだもな もし間違って先生になったらだけど。
いつか そっちで会ったら 一度だけ マサコ先生に教わってみるのも良いかな。照れるけどね。
ずっと 先になるけどね。 



親としたらさ〜 
絶対 忘れないのが有るんだ。 最後だからここで言って 忘れてやるよ。
あのカレーライス事件
カレー作ってる時に あんたさ、鼻水垂らしたろう 俺ははっきり見たぞ!
カレー鍋に 落ちる鼻水


そんでもって 食べる時は 俺と妹によそって 無理矢理にでも美味しいって言わせようとしたよね。
なんども、美味しいか? 美味しいか?って繰り返して聞いて来たよね。
それで、自分は食べなかっただろう 俺知ってたんだぞ。
もう、ゆるしてやるよ。 今日からな。特別ゆるすんだからな。


今日の仙台の空は すっきりと晴れ上がっているようだ。
俺の所からは あまり見えないんだけどね。
きっと、この気持ちの良い空を 羽ばたいているんだろうな。
ゆっくりと飛んで 生まれ故郷の海や 思い出の学校 葡萄の里
俺の知らない若かりし頃の場所 みんな回っておいでよ。
それは それで また楽しそうだな。 思いっきり楽しんでこいよ。
きっと、昨日までの痛みも消えて すっきりと飛べるんだろうからな


    あ そうだ 一つだけお願いが
    じいちゃん 連れて行こうとするなよな
    ばあちゃん じいちゃん Loveだからな〜
    じいちゃんは もう少し こっちでがんばるからさ。
    そのうち みんな行くんだから 気長に待っててくれよ。
    じゃぁな お疲れさま
    しばらくは ゆっくり 過ごすんだよ。
    酒飲みすぎるなよ。 腹こわすなよ。 
    気が向いたら 連絡よこせよ。
    でも 急に顔出したりするなよな びっくりするからさ。

  ほんと、長い間 お疲れさまでした。


  あ、そうだ。お釈迦様に会ったら 友達になっておいてくれよ。
  あとで 紹介して欲しいからさ。


          
       


        道夫記   2010年 11月 11日