想像の羽根  11月10日

(ナオキ君は ドックランで友達になった 小学3年生)


こんちはぁ アイのおじさん 入院してるんだって。
それも、無菌室だってね。 
でさ、学校の先生に言ったら 出来たら取材して 学級新聞に記事にしてごらんて言われた。
インタビューさせてくれるかな〜


うん ナオキ君のためなら OKだよ。 何でも聞いてごらん。


じゃあさ、この前 メグちゃんが来て 病気の事は聞いたから 今度はどんな生活してるのか聞こうかな
お、それ良いんじゃない。何でも聞いて来なよ。 
この部屋は 誰が入れるの
すごく少ないんだ。 まず お医者さんでしょ それと看護士さん と、おじちゃんの大事な奥さん
ほとんど それだけだね。


あれ、僕はどうして入れてるんだろう?
おっ 良いとこに気がついたね。 君の背中を見てごらん
わぁ 羽根が付いてる。 カッコイ〜
その羽根はね、想像の羽って言って とくに子供は 体重が軽い分 飛びやすいし
小さいからどこでも入って行けるんだ。
子供の時にいっぱい飛んでると 大人になっても飛ぶ事を忘れないんだって


うわぁ すげぁなぁ おじさん ありがとう
ちがうよ、ナオキ君 その羽根はおじさんがあげたんじゃないよ。最初から君が持ってたんだから


おっと、インタビューにもどらないと  あれぇ おじさん もしかして この部屋でも 想像の羽根広げてるの
そうなんだ、おじさんも子供の頃 良く飛んでたから 飛び方忘れてないんだ。
で、おじさんは 時々 この部屋を宇宙スティーションに想像してみるんだよ。
無重力空間で 時々 地球とパソコンや携帯で連絡とって、
そうそう、ここの部屋のご飯は 全部 すっかり暖めて菌を殺さないと食べられないんだ。
だから、生ものは無いし 納豆も無い 当然 サラダも糠味噌漬けも無いよ。宇宙食みたいに厳重にラップにくるまれて
食べる直前にレンジで 3分チンしてるんだよ。 それっぽいでしょ
うん、そうだね でもちょっとかわいそうだな。 おじさん お刺身 すきだもんね
ありがとう、でも病気を治すためだったら 少しのがまんは やるっきゃないよ。
そうそう、それで時々 奥さんがね、母船に乗って地球から 生活物資を運んで来てくれるんだ。
水や着替え それに家族の様子なんかをたずさえてね。奥さんと話す時間が 一番 今はうれしいかな〜
あ、ナオキ君と話してる今もうれしいよ。


病院の中はどうなってるのかな〜
おじさん この部屋から出られないから 病院の中の事は 全然分からないんだよ。 患者さんとも話した事が無いんだ。
え、じゃ ほんとに話は おくさんとくらいしかしてないんだね。
そうだよ、でも時々 看護士さんと天気の話くらいはするけどね。 お医者さんとも 体調の話はするしさ


だから、時々 ナオキ君も来てね 話をしようよ。
うん,分かった。 今度は学級新聞持って来るよ。楽しみにしててね。
さ、この羽根でドックランに飛んでってみようっと じゃぁね アイのおじさん またね。
ワッハッハ 飛んでっちゃたよ 風の又三郎みたいな奴だな〜